鍵よ 出て来い!/杉菜 晃
 


僕の中には
ゆかしい枯野が広がっていて
いつも日が当たり
おいでおいでをしている

そこには死んだ母や姉がいて
昔飼っていた猫やアヒルもいて
みんな愉しそうに輪を作って踊ったり
寝転んだりしている

寝転ぶのなら僕にもできそうだし
何しろそこは陽だまりになっていて
あたたかくて 
気持ちよさそうなので
行こうとすると
鍵がなければ入れないのだと言う

開けっぴろげで
鍵なんか必要ない世界なのに
鍵がなければいけないとは
どういうこと?

とにかく鍵は家の中に
あるには違いないのだけれど
どこに隠れてしまったものか
それを見付け出さなければならないのだ

家の中は乱雑をきわめているし
なにしろ
ものぐさで根気のつづかない
僕のことだから
何年かかるものやら
考えただけで気がめいる

おい 鍵よ 出て来い!




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