小さな唄/海月
 
自転車を転がして遠くに向かう 
行く当てなんてありゃしないさ 
僕が足を止めた場所が目的地 
長い長い一本の線路の横を漕ぐ 
電車はどちらから来るのだろう 
僕の前から来るのだろうか? 
僕の後ろから来るのだろうか? 
どちらにしても重なる時は手を振るよ 
電車の中では知らない人が何処かに向かう 
夢を追うのか、夢を捨てるのか 
僕には分からない 
出来るだけ風を切り 
涙を風に乗せて海に還す 
無人駅で切符を破って捨てる 
夢の乗車券も此処でお別れ 
さよなら 
夜の砂浜の上に転がる 
人は誰もいない 
祭りの後の静けさ 
波の音が砂を運
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)