双子の花火/あおば
先祖は、なにをしていたか分からない
落ち武者とも河原乞食とも言われている
本家の実さんは、強い侍の末裔の顔をして
武者人形の鎧を磨く
子供の頃、母に聞いたら
戦争でお寺が燃えたから、本当のところはよく分からないのだと
否定的なことを言う。
母には関係ないことだから、冷淡な物言いだ。
父は、直接関係ないから、実さんに下駄を預けて知らないふりをする。
知っているのならば教えてくれたって好いのにと思う。
父は、家の者には素っ気ないけど、知らない人には饒舌で話もうまい。
若い頃小説を書きたかったと、母に告げたとはお笑いぐさだが、案外的を射ていたのかも知れない。
童話一冊無い家に、文
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