名付け/霜天
想像して
君はよくそう言うけれど
実際のところ僕は、何も思い出せずにいる
海沿いの寂しい国道を夕暮れに倣って左に折れると
何もない町があるのか
君の住む町があるのか
もう、どこにも行けないのかもしれない
想像して
君の声が降る
世界は波で、できているらしい
寄せてくるものが、返るものよりも多すぎて
伝える言葉よりも、先に行く言葉たちが
昨夜の夢の続きよりも、語られる物語が
届かない視線が
空の縁取りが
心の
稜線が
互いに打ち消されることもなく
混ざり合って震えることもなく
強く弱く
ただ打ち寄せて
積もる
想像して
君の声が通る
ただの
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