夏の待ち人/海月
 
今日も緩やかに流れて行く
空の雲の様に静かに消える

音も立てずに傍を離れる
君よ

古びた校舎の色合いは時を刻んだ証
茶色や赤錆は独特の匂いで僕を向かえる
錆びた鉄棒
一人揺れるブランコ

僕の影は遠くに伸びるだけで
夜の暗闇に飲まれて行く
夕焼けの後の静けさ

足跡も残さずに傍を離れる
君よ 君よ

二人で夢を描くことも許さず
季節は巡る
輪廻の中をそっと
惑わす幻影を追いかける

僕は君を見つめているのか
君よ

君のいないその教室の角の席を
廃校になり廃棄になる机と椅子
落書き塗れの机
色褪せた二人の名

鉛筆で傘を書き二人の名前をその中へ
二人が二度と離れぬように
願いを込める

君は今は何処にいるのか
君よ 君よ

今日も君を待つ待ち人とえと僕は化していく




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