黒い波/松本 涼
 
遠い遠いところから密やかに膨らんで
大きく高く重くうねった黒い波のように

その哀しみは時々にやってくる

泣ける時にはタオルケットを
丸めて抱き締めながら
九つの頃と同じ声をあげて泣き

その哀しみよりも私の身体が
大きく高く重く膨らみ始めれば

私は静かに私を投げ出して
哀しみのうねりをゆっくりと辿る

そして私はひっそりと気づく
哀しみに強くなってはいけない

黒い波は私を深く押し分けて
やわらかなやわらかな
私の弱さを通過していくのだから
 


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