シュルの夜/結城 森士
クレヨンの記憶を透視して心酔する
実景を曲解することで救済を求める
孤独に凍える青年の無防備な嘲笑は
赤みを帯びて夜に没する
―赤いランドセルの中身が飛散したある朝に
純粋すぎる挨拶が冷たい空気に消えていく
どこかぎこちないお辞儀をした数人の少年達は
北の風に吹かれて道の向こうに消えていってしまった
(その後姿を静観する自分の落ちぶれた事に頭を振る)
あの頃教室では顔の火照る暖房が
ルームメイトの手をジンジンと溶かし
その痺れる無感覚と痛みに笑いながら
つまらない教科書を眺める少年は
そっと椅子を引く少女に恋をした
熱い機械音と虚ろな唇の感
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