九月/落合朱美
 


教えてほしい 
あの空の青みの 
ほんの隙間の翳りの中に 
何を見いだし詠うというのか 

たおやかに流れる川の
水底に沈む
ひとかけらの悪意を
掬って頬張った 
その後の嗚咽に似た 
そんな言葉しか吐けない私に 

陽射しはゆるやかに角度を変えて 
蜩ももう声をひそめてしまった 
季節はふりむきもせずに 
淡々と歩みつづける 

むきだしの肩を包みこむ
何かを探して手を延べても 
この指に触れるのは 
気配ばかりで 
私はまたひとつ 
言葉をうしなう




戻る   Point(25)