歩く花/服部 剛
夜になってから急に
庭の倉庫に首を突っ込み
懐かしい教科書を次から次へと処分して
家の中に戻ったら
腕中足中蚊に刺されていた
それを見た母ちゃんは、言った。
「あんたはつよいねぇ・・・」
心の中で僕は、呟いた。
「つよかぁねえよ・・・」
( 紐で結ばれた国語の教科書の表紙は、
( 嬉しそうに花開いた向日葵(ひまわり)であった。
*
ひとすじの道を歩いていた。
ただ歩くしかなかった。
時に気まぐれな
突風に倒されても、
通り雨にずぶ濡れても、
やがて空の雲間から射す光を注がれて
へなった茎は不思議な力で起き上がり
ふたたび、ひとすじの道を、
いつものように歩き出していた。
( 根っこなど、とうの昔に抜けたのだ・・・
今日も根無しの向日葵は
無数の根っこを足にして道の上を這ってゆく
口笛を吹くように太陽の花を揺らして
猫背な茎で、ゆらゆらと、
何処までも続く、風まかせの道を。
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