よる。/さとる
青い目の太っちょネコは、ちいさくまあるい眠りからさめると、
弓をひくような格好で伸びをしたまま三日月になって、
別れをつげることなく真夜中の空へのぼった。
ぼくは満足にその成長を見上げたけれど、してあげられたことは少ない。
ネコたちはいつも自分の力でのみ育っていくようにみえる。
ぼくは、なにかの役に立ったのだろうか。
そんな想いはつゆしらず、青かった目は黄金の粒子を暗闇にほうって、
いまは細長くきれいなからだで、夜を立派にてらしている。
ぼくはその姿をカアテンのそでから、そっとしばらく見守った。
ひととき視線が交差して、ぼくは顔をそむける。
いつしか雲がさえぎって、やがてぼくらは薄れていった。
手に届かないことがひとつ、また増えたとおもった。
朝、夢へと落ちる直前に。
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