「東京アヴァロン」/木賊ゾク
 
 
まだここに少女はいた 
片足だけ残って、小石を崩していた 
篠突く雨に耐えかねて、隻脚は交わるように 
ユグドラの樹の上に、交差した根に添えた 
終わりきった戦争だ 
突き刺さった青槍は、肩から下を食い散らし 
剣士の形相因を剣に預け、握りなおすと 
ユグドラの樹の上に、虚ろ目に映る 
あなたの隣に座り込んで、首に見えた時計が動く 
半身は白く半身が黒く、微笑みはそこにはない 
カリバーンは名前ばかり、助けるばかりで 
私はそっとアヴァロンを、瞳の奥へ映した 
夢から覚めると、私は図書館にいる 
机の上にある、ファンタジーを閉じる 
隣にいるあなたを、抱きしめて 
両腕の幻想を、不思議に思う 
私は夢から覚め、ユグドラの樹の下で 
片腕に錆びた刀が、私に死ねというようで 
もう動かないあなたを、抱けないでいると 
今以上に雨は酷くなっていた 
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