探しもの /服部 剛
うたたねをして目覚めると
一瞬 黄金色(こがねいろ)のかぶと虫が
木目の卓上を這っていった
数日前
夕食を共にした友と
かぶと虫の話をしていた
「 かぶと虫を探さなくなったのはいつからか
大人にとってのかぶと虫とは、なんなのか 」
それからというもの
黄金色のかぶと虫は
日常のあちらこちらに一瞬現れては
足早に這い、何処かに消えていった
鏡に映る
くたびれた大人の僕の中から
麦わら帽子をかぶり、
虫取り網を手にした半ズボンの少年が抜け出して
淀(よど)んだ煙の渦巻く明日へ
無邪気にも
駆け出していった
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