「痒み止め」/服部 剛
 
しゃわーで汗を洗い流していたら 
いつのまに踝(くるぶし)が痒(かゆ)かった 

ぽちんと赤いふくらみに 
指先あてて、掻く爪先も
痒みの芯(しん)には届かない 

見逃していた
身の回りの小さい幸せと心配事の数を 
指折り数えて比べてみる 


過去という名のぶらっくほーるへと吸い込まれた無数の「昨日」と
目の前に空白の日記帳を広げる「明日」との間で、「今日」という
日の境目にしゃがんだ私は、全ての心配事をほっぽり投げた片手に
チューブを持ち「痒み止め」のくりーむを踝の赤いふくらみに塗る


空白の日記帳の中に 
黒い足跡の道を連(つら)ねてゆく 

この足に 







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