「空色の手紙」 〜蝉の伝言〜 /服部 剛
 
がや}く <太陽> の幻と
地に伸びる無数の人影 

手軽に投げ棄てられていた <愛> は、
街中のゴミ箱に散乱していた。 

( やがて闇に吹く風に揺られ
( 吊り下がったまま振り子となるナイフの向こう 

( 暗闇に一粒の光が漏(も)れ始め
( 光の穴の中から、ある優しい人影が
( 涙で染めた空色の封筒を手に
( ゆっくりとこちらに歩いて来る 


  * 


目覚めると、汗ばんだシーツの上。 
濡れた首筋に手を当てながら身を起こし、
外でしきりに蝉(せみ)の鳴き続ける窓を開く。

見下ろす焦げた屋根上に
細足の動きを止めた一匹の蝉が、
何処までも広がる夏空を仰いでいた。 







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