棚の中のきりちゃん /
服部 剛
姉が書いた張り紙1枚
「 耳がとれそうです・・・優しくしてあげてね 」
棚の中に手を伸ばし
長い首を抱きかかえ
うす汚れた黄色い毛並みを撫(な)でると
つぶらな黒い2つの瞳に滴(しずく)が光った
今日
風邪で仕事を休んだ僕は
きりちゃんの顔が見たくなり
誰もいない姉の部屋に入ると
ベッドの足元にいたきりちゃんは
少し恥ずかしそうに
布団(ふとん)で顔を隠していた
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