駅前/
石原大介
駅前の
立ち食い蕎麦屋のトッピングの
百三十円の
黒い汁に浮いたかき揚げを齧りながら
予感することと
予感された世界に生きることとが
微妙に喰い違う
駅前の
ガソリンと赤錆の臭う
ケムリのような雨にふれていた
犬と誰もが
ワイパーの這いずる曇り空の
二つに裂ける咆哮そっくりの
通勤快速のブレーキに震える
高架下の赤い供花を見ていた
いや
まるで
色褪せた故郷の絵葉書を
訝しげに拾い上げる子供のように
目を背けていた
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