駅前/石原大介
 

駅前の
立ち食い蕎麦屋のトッピングの
百三十円の
黒い汁に浮いたかき揚げを齧りながら
予感することと
予感された世界に生きることとが
微妙に喰い違う

駅前の
ガソリンと赤錆の臭う
ケムリのような雨にふれていた
犬と誰もが
ワイパーの這いずる曇り空の
二つに裂ける咆哮そっくりの
通勤快速のブレーキに震える
高架下の赤い供花を見ていた

いや
まるで
色褪せた故郷の絵葉書を
訝しげに拾い上げる子供のように
目を背けていた





戻る   Point(4)