積み重ねて掘り出すべき数字/海月
 
歩行杖を自分の足みたいに使い歩く
歳のせいで足腰は弱っている
猫背以上の背骨が悲鳴を上げる

つるはしで地面を掘り続けている
それは根拠もない財宝を掘り出そうとしている
やめないのは可能性を信じているから
と、心の奥底で決めていた

街人の陰口には大分慣れた
それすらも聴く耳も持っていなかった
僅かに聞こえるのは君の声

テーブルの上で仄かにランプの火は揺れる
息を強く吹いたら消えてしまいそうに
弱々しくも照らしている

本棚には埃が溜まっている
必死になっても、無駄な事だって在るさ
空腹の胃にアルコールは効いた

幸福の法則や勝利の方程式
得られるのは巨万富
未だに縋り付く

現実を受け入れたのならこんなに苦労することは無いだろう
薄々と意地を張ることにさえも出来なくなっている
その事に気づいても気づかないフリをした

可能性を見失った
学者の末路は断末の叫び声

1と0

僕が最後に掘り出すべき数字は―――
僕が最後に掘り出した数字は―――


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