バスに乗って/武富諒太
バスに乗って知らない町へ行こうと思った
カバンには一冊の本と君の思い出をつめて
途中でうっかり君と一緒に通った道に出て
土手の際を走って大きな川を渡りすぎた
君と過ごした夜とは違って
小さな店が軒先に
リンゴやみかんをならべて売っていた
バスがやっとこ通れる町並みを
夕暮れとともに通り過ぎ
知らない町までたどり着いた
また訪れる夕闇や
越えなくてはならない川の流れが
僕に君との日々を
思い起こさせるだろうけど
君がくれた勇気と優しさを携えて
僕は歩いてゆくだろう
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