ぐるりとまわる/七条 優
 

意識が
眠りに向かう中
蝉の声が
ぐるぐるまわっていた
夏の匂いと
消毒液の匂い
まざりあう瞬間を
壊してしまうかのように
ぐるぐると
蝉の声は
わたしの上に
おりてきた

脳裏の眼とくびすじが遠い
なんとか距離を埋めたいのに
こぼれることばを
拾いあげきれない
手が届かない
わたしの
ことばが
消えてしまうよう

そんな
恐怖さえも
蝉の声は
ゆるしてくれない

脳裏に浮かぶ空白に
蝉の声が
浸食


浸食。


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