影闇/海月
ねぇ
呼び止める声は口にならない
君の背中を静かに見送った
陽炎は左右に揺れるだけ
移り変わる心模様
バス停までの道を遅らせてくれないか?
君の一歩後ろを歩く
君の足跡を辿る
ぽつり ぽつり
と、涙を零し
枯れた地面を濡らす
その鞄を僕に持たしてくれないか?
中身は予想が付くけど
それ以上に重たく感じるのは
僕の気のせいだろうか・・・
バス停までは道は一本だけ
バスは一日に数本だけ
どうか、どうか、と心なしか思った
錆び付いた標識が物憂げに僕を見ている
君の後ろ姿を抱きしめたら行かずに済む
自分勝手な答えが浮かんでは消えた
さよなら
一言呟き君を連れたバスを見送った
君のいない
一本道を僕は独り独りきりで家路に向う
影は静かに闇に消えた
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