美しき停滞 彩られる世界/紫音
 
華やいだ雑踏を抜けて
遥か高く聳え立つ構造物に
押し潰される
ワインレッドの血の
芳しさに恍惚として
異世界への扉を抉じ開ける

忘れるな
此処には何も無いことを

開けた視界に飛び込む
スカイブルーの虚脱空間
大きく広げた手に
神話を受け止める

投げ出した心音を
どこまでも木霊させ
林立する無造作な魂に
似せて創られた擬似世界

振り返るユメはなく
思い出すコトもなく
生きた証という幻を
踏み潰そうとして
土踏まずからスルリと逃げられる

忘れるさ
其処には何も無いことを

折れかけた
チャコールグレーのピノキオの足に
添え木をする
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