信濃追分の風/服部 剛
人間は汚れている。身も心も。
人の世のニュースを写すテレビ画面の中で。
私の姿を映す鏡の中で。
全ての日常は、色褪せていた。
*
一人旅の道を歩いていた。
信濃追分の風に吹かれて。
緑の木々のトンネルの中で
頭上の葉群は風に唄い始め、
思わず立ち止まり、見上げていた。
*
木々のトンネルの長い暗がりを抜ける。
道の傍らに、一輪の花が咲いていた。
みつめると、細い茎を揺らして花は踊り出し、
背後を彩る七色の花々が合唱を始めた。
畑では、背筋を伸ばして天を指す、
ぎっしり並んだ玉蜀黍が、肩を組んで揺れていた。
里
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