豆電球/海月
豆電球ほどの灯りがあればそれで十分で
傍に紙と鉛筆があればそれで満足した
ミカンのダンボール箱が机代わりで
ダンボール箱の上に布でも掛ければ一端の机になる
窓はガタが来ていているのか、雨が降れば揺れて音を出す
今にも壊れそうだが壊れたことは一度もない
それが唯一の自慢と言える
華やかな家具なんて何もない部屋であるのは
階段箪笥と代用の机と脚の弱った卓袱台しかない
それでも生活をするには多すぎる
現代的な生活はこの部屋には無い
と、僕は呟いた
僕が誇れるのはただ一つだけの
今から数十年前に貰った
この薄汚れた賞状
肩書き通りの仕事は満足に出来てなく
今までに書いた本は僅かに一冊
世間が海ならば此処は砂浜
僕は水のない静かに砂浜を漂っている
いつの日にか海へ
豆電球の下で若人は夢を見ていた
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