しましま/夕凪ここあ
{引用=夜、眠る前には忘れることなく
絵本を開く少女
はお話の最後を一度も見たことないまま
眠りにつく、早く明日が来ればいいのに、と。
空の色によく似たワンピース
がお気に入りの少女
裾を花びらのように翻して
駆けていく、夏。
ラムネが飲みたい、と
少女の手には少しだけ大きな瓶
ひんやりとして涼しげな炭酸
が少女はあまり得意ではなかったけれど、
びーだまが欲しいからと
少女は覗き込む
瓶の向こう側は少し歪んで。
少女が昨夜
細い指に結んだ橙の金魚と想いを
小さな器にそっと放した
尾をなびかせて泳ぐ、音も無く
明け方には泡も消えて
空になった器
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)