透明花火/藤原有絵
 
浴衣に片思いを忍ばせて
ぼうっと光る
夜店の明かりに吸い込まれていく

君は決して
私を待つ人でなく
私は決して
君を待ったりしないと決めていて

今思えば

それだけで
私たちの関係の全てでしたね


どおん


夏の轟きに
言葉を攫われてしまった


その言葉は

待つ事も無く
待たれる事も無く

思い出すたび
甘やかな記憶として
少しずつ褪せていき

透明なものへ
還っていこうとするのです


指先だけで繋いでいた

その関係こそが
私たちの全て
だったかのように


攫われた言葉は
当時の私
そのものでした




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