星を拾う/黒田康之
小さな手は星を拾った
大気の熱に
輝きは奪われ
小さな
つやつやと光る
黒い
石になったその星は
小さな手に載せられて
女と一緒に街を歩いた
街は赤紫の夕景を傾かせて
女の歩みを導いてゆく
はるか上空から落ちてきた星は
誰も殺さずに小さな黒い石になった
女は小高い丘の上にある家に向かう途上で
小さな星を放り捨てた
星はかつての何十億分の一の軌跡を描いて
草むらの中にコトリと落ちた
女は家のドアを開けた
どこまでいっても半生でしかない人生が
女の細い肩には詰まっていて
星の重みはその半生の群れたちに
微かな痛みを加えていた
聡明でもなく
純情でもない女の
うら若い痛みになって
星はその生涯を終えた
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