日付/iloha
 
雲の坂道を走る
小さなバイク
蝉時雨を横目に、ぼくは
食事の支度を
プツプツ
音を立てる落し蓋が
砂埃を笑い
山の辺の切りたつ階段を
葉っぱといっしょに転げ落ちてきた、きみを
乾いたタオルで包むと
蚊取り線香から伸びる煙の紐が
夜の膝をくすぐる
そのまま
膝をつ つつ
いて
汗の匂い
混じりあう
ゆ床
の触感
しっとりとした板の間から
崩れ落ちそうで
裏返しになりながら
時計回りのトンビに
曳かれていく時刻を、目で追う
蔓に抱きしめられ
擦り切れていく夕べに
遠く
向こうの山肌から
吹き上げて
この部屋に流れこんできた昨日
が、残した勾玉は
神木を震わせ
杉の梢から
明日へと
抜けていく日、ひ日々
日付には刻まれている
飴色の撹乱
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