家出少女の置き手紙/海月
 
月は高く窓ガラスをすり抜けて 
フローリングの床で優しく揺れている 
君の声は夜風に乗って流れて 
頬を伝う涼しさは本のページを捲って 
私は一枚と一枚と戻している 
扉を叩く音が静寂の空間に響いた 
人影は左右に揺さ振られて 
躊躇いがちに声を出す 
家の中に君を入れる 
泣く声と上下する肩 
ホットミルクを差し出す 
私の帰る所はない 
今夜は泊めてくれない? 
と、君は啜り泣き言う 
何も言えずに招き入れた 
日も変わる数時間前 
共に今日の最後を見届ける 
なんだか、哀しい 
夕食は近くのコンビニ弁当 
一口、二口、 
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