脱衣録/A道化
 









夏の
体の
着衣のまわりくどさを
一枚、一枚、可愛がるように
指でしか剥ぎ取れぬ熱を
一枚ずつ剥ぎ取ってきました


あ、
そういえば、
非常階段の、
回転する放課後のどこかで、
夏を帯びてゆく銀色の管楽器の、
誰かの一途な呼吸の描く輪の、
多重の痛みが校舎を夕刻に、
していった、そのとき、
ああ、あのとき、
耳でしか受け取れぬ熱があった


また、一枚、


着衣のまわりくどさを
一枚、一枚、可愛がるように
指で剥ぎ取った熱はいつだって
気が遠のくよりも先に
ああ、ほら、また
一枚ずつ遠のいてゆくのでした







2006.7.27.
戻る   Point(25)