海/奥津 強
冬。私は、怒れる椅子に座っていた。人間椅子である事は明白で、中にいたものは、汚れた幻覚だったのかもしれない。となると現存するのが疑問だが、椅子が怒っていたのは事実で、私は、斜め40角度で、海を眺めていた。
夢でよく見る。海は恐怖の対象である。私は思うのだ。後、1年、後、1年経ったら、この汚れた人間を流してしまおうと。だが、その時、強烈な孤独感に襲われるのである。
そうして、26年の冬がやって来た。私は、死んでいる。そうか、海に向かわずとも、私は海を見る事が出来る。私の死は、0歳から始まっていたのだ。
・・・愉快である。
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