潮騒の夜 /服部 剛
 
足元は、崩れている。 
真っ直ぐ歩くことも覚束(おぼつか)ず、
肩が揺らいでいる日々。 

( ぼくの脳内には
( 壊れたリモコンが内蔵されている 

胸を張れども三日坊主。 
地上の重力はいつの間に、
ぼくの頭(こうべ)を稲穂に変える。 

( 何かを求めてはいつも
( ガラス細工の割れる音 

( 腕を伸ばすよりも 
( 綺麗なものは綺麗なままに 
( 遠目に眺めていたい 

  * 

海へ行こう。 
浜辺には、不安定に連(つら)なる足跡を。 


もはや 
語り尽くせぬ言葉の為に 
辿り着かない世界の為に 
見つからない「答」を
開いた掌(てのひら)から、 
風に放とう。


夜の浜辺に腰を下ろし、 
両手を冷たい砂に埋め、 
只(ただ)潮騒に耳を澄まして、

みつめている。 

海の面に揺れる、月の光の道を。 







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