架橋 /服部 剛
 
目の前に置かれた石を 
思い切り、蹴る。 

弾道は前方に細く長い弧を描き 
一面の霞の向こう側にある 
無数の「明日」を貫いて 
激しい雷雨の日を貫いて 
柔らかな陽が注ぐ日へと 

弾道が遠く伸びた先に 
小さい石は、消える。 

  * 

( 人影は、何処までも歩く。 
( まだ捲(めく)られていない、無数の暦(カレンダー)の中を。
( 誰もが歩く、この世の果てへと続く道を。 

( 時として、地上の重力に俯(うつむ)いて、立ち止まる人影。 
( 涙を拭い、顔を上げ、再び歩き始める。 
( 万有引力に引き寄せられて、 
( 道の向こうから、ある人影が歩いて来る。 

( 空白の間に道は在る。 
( まだ描かれていない、全ての情景の為に。

( 長い道の両端から、ふたりの影は、距離を縮める。 




戻る   Point(7)