青い標識/服部 剛
 
私とあなたの間には 
数十億光年の距離があり 
互いの影はいつまでも交わることなく 
仮想の白い空間を歩き続ける 

( 孵化(ふか)を知らない孤独の闇に包(くる)まれて 
( 私達には何時までも瞳と瞳を合わせる 
( 出逢いの季節が訪れない 

( 手の感触を失った 
( 距離の無い 
( 時代の中で 

  *

個室の薄い壁から透けて見える
草原の間に伸びるひとすじの道 

空に浮く、真綿(まわた)の雲を眺めつつ 
戯(たわむ)れる、二羽の蝶々を追いかけて
なだらかな丘の斜面を上ってゆく少年 


道の始まりで佇(たたず)む私の影の目の前に 
矢印の青い標識が立っている 







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