へりくだる/あおば
 




車輪の下という小説が売れるので
透明板ガラスを溶融
車の下敷きという文房具を試作する

『凸凹になった波形は
薄い光が虹色に染まるまで
何度も何度も重なって
麗しいハーモニーを奏でます』

宣伝文句は出来たのに
試作品はとても脆弱
粗末な扱いには耐えられず
分厚い文机の隅に陣取って
写経の人は注意深く筆を置く

騒擾罪をまき散らす
各駅停車の待ち合わせ
時間稼ぎの特急電車
ゴトゴト走らす日向道
無軌条電車のすれ違い
走り抜く日々の怠慢
強権発動機の唸り声
ぶんぶん回る
車輪の下の
陸蒸気
光を求めて
へりくだる
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