夏の嵐、または転位/黒田康之
らす
もしこの雹が止み
平穏な空気がこの地表の空を満たすものなら
私は今
私の手のひらにある一顆の桃を
大空にある太陽として
この地表に置こう
青に埋まった吾が手を伸ばして
この地表の天空の中心に置こう
怜悧な青の只中に
桃の香気がひとつあって
大地は裏切ることのない空になるだろう
雷鳴
すると果てしない雷鳴
雷鳴!
何も始まらないまま
何も終わりはしないと
雷鳴!
雷鳴!
雷鳴!
私はこのまま天空のこぶしに埋没し
ただ一面の青になるのだ
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