夏の嵐、または転位/黒田康之
 
山よりも高く雲は聳えて
雲は天蓋として
瞬く間に紺碧の空を覆う
燃え立つような風が
一瞬にして地表の全てのものを清めると
卒然として雹
雹!
瑠璃色の雹がアスファルトに砕け
赤土に食い込む
バラバラと
ガラガラと
降りそそぐ
握りこぶしのような瑠璃色の雹は
だんだんと大地をその色で覆う
雹で埋め尽くされてゆく吾が庭の
瑠璃色から伸びるメタセコイアは
やがてこの青に埋没してゆく
私も
花も
恐ろしく熱い夏の地表のあらゆるものが
こぶしのようなこの雹に
何万ものこの雹に打たれ
いつしか空の瑠璃に染まる
いつしか大地は天空になり
地表は黒い雲の峰々を照らす
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