坂道ー裸トカゲ/あおば
どんどんと登り
少しも息を切らすこともなく
とうとう坂の頂上に着いた
そこからは急に眺望が開け
ゆるやかに下っている
良い眺めだが、これからどうなるのだろう
道は相変わらず狭く
気を抜くことも出来ず
視線をぐっと手前に戻し
車幅に余裕を配っていた
ので
気が付くといつの間にかタイヤは消えている
フルスピードで逃げたのだ
誰もいない坂道の上空は眩しいくらいに明るくて
今日も高曇りの春が拡がっている
遠くで揚げ雲雀の声がする
腹が空いたなぁ
殺した女に群がる男達の姿が傷口を化膿させるのだ
と
抗生物質の丸薬を渡してくれた偽医者の笑顔を
思いだしながら
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