一週間 ー水曜日ー/海月
 
ベランダに出れば灰色の空が明るく色付く 
何処から現れた一匹の鴉に餌をあげる 
近所では餌をあげるな 
と、注意を受けた 
そのために誰も起きていない時間を選んだ 
まだ、電車も走ってなくて 
静寂の群れが道路を横断する 
一時間もすれば静寂は雑踏に変わるだろう 
僕もその中に飛び込む運命を背負っている 
朝食を簡単に済ませて 
重たい身体を引きずる様に動かし 
満員電車で人と人に揉まれて 
洗濯機の洗濯物状態 
心身ともに疲れてしまう 
上京してから趣味である写真を撮っていない
ただ人物が怖くて一度も人を撮ったことがない 
そのために僕の写真には人が写っていなかった 
誰もいない場所(とこ)を撮れば撮るほどに 
心に、空間が出来た。 
その度に人と距離を置くようになった 
明日も鴉が来たら一枚写真を撮ろう
埃を被った箱 
色褪せた説明書 
使い古したカメラ 
忘れているけど今日(すいようび)を生きている
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