小詩集【水没ハーモニー】/千波 一也
 
して
  潔く両手を離そう
  
  いたずらな熱を与えてしまわぬように
  いまから澄んでゆこうとするものを
  いたずらに
  滲ませてしまわぬように
  潔く両手を離そう


  最後の水音は思った通りにあっけないから
  軽かっただろうか
  重たかっただろうか
  迷ったふりをしながら
  いつのまにか慣れてしまっている
  せめて
  擬音に委ねてしまわぬことが
  唯一のすくいのすべだと信じている

  最後の最後までには
  愛のうたが完成することを願いながら


  さよならの居場所は零度
  のぼることも
  おちることも
 
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