暗い日曜日/六崎杏介
 
スコールを反射する鏡面のボールの感謝の産声で夜が終わる
ショールに豚にパールのトワレ、壊れた蓋付のシュガーポットに
カーテン越しに卒倒する架天の光、幼子の虹む名札、月墜ち朝顔の
丘、去れる五月の新緑の放火魔達を大鎌で攫ってゆく天使の蝋化
した光の麻疹に私は感染し、確かローズ花壇での異端のミント僧の
葬送で絨毯道の舗装を赤銅色の銃弾がロールシャッハ状に染め、手は
枕下のラブレターを失くした北向きの春へ蒔く、間に螺旋のマルクが
窓の中を歩く私の町並みを、可憐な少女の化繊のマタニティへ投獄し
孕んだ蝶々、の篭城により紅潮した空を金魚の引く馬車に乗って
逃亡して行った、一帯に歯医者の香り
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(4)