透明な夜を照らす/むらさき
でいる
放心している事が
幸せであるかもしれない
その新しい疑惑が
今夜もまた
わたしにあなたの夢を見せる
風は無い
わたしとあなたのすき間には
いくつもの
透明な夜が並んでいる
床につくと毎夜
天井に同じ小さなしみを
見つけるように
わたしは
あなたのかたちを
いたるところで
見つけるだろう
古い椅子の影や
格子窓の明かりや
開けたままのドアに
まったく
久しぶりのように
その時
わたしは確かに
微笑むのだが
あなたは
そこにはいないのだ
記憶のあなたと
肉体のあなたが
出くわすことがないように
細心の注意を払いながら
夜を歩いていく
あなたの名よ
それはいつまでも
生温かい呪文で
それを再び呼ぶために
わたしは
捉われてゆかない
世界の
穏やかな孤独に
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