紅茶一葉/海月
青々しく若葉が萌(もゆ)る
初夏の凛とした姿に眩暈を覚えて
倒れこむ様に入った
喫茶店
働いている人は全部で二人
十代半ばと二十代半ば
珈琲は飲めないから紅茶を頼む
壁に掛けられた一枚の絵
異国の世界の紅葉
一枚とまた一枚と散っている
名前の知らないジャズミュージック
聴き心地良くて
ふと、泣いていた
思い出すには早いのかもしれない
珈琲好きの貴方(きみ)の事
思い出はそっと空の海に帰して
もう二度と手の届かない場所へ
あの青さの中へ
背伸びをしても届かぬ空へ
片道切符代金を払い
僕はもう少しだけ此処に居る
貴方(きみ)のいない世界を・・・・
貴方(きみ)の分まで・・・・
今日も紅茶の葉が一枚摘まれた
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