路上の影/服部 剛
単調に繰り返される無数の足音の渦の中で、
希望を見失った盲目者は歩道を歩いていた。
朝の足場がやけに固い。
ガラスの壁の内側にはふたりのマネキン。
何処(どこ)かに顔を落としたまま
草原を駆け抜けて来た
半ズボンの少年とワンピースの少女が、
互いの手を結ぼうと差し出しながら
踊っている。
歩道には、
誰かの踵(かかと)に踏み潰(つぶ)された
薄っぺらなゴキブリの死骸。
( ゴキブリの影は、いつの間に、
( 見下ろし通過する私の心の隙間に忍び込み、
( 私の脳は灰色に固まる。
( 昨日まで、のどかに友と語っていた笑顔が、
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