湖心へ/杉菜 晃
 

 暮れなづむ山の湖を

 一羽の白鳥が滑つていく

 湖心へとーー



 周囲と断絶したわけでもないのに

 他の鳥たちに追はれたわけでもないのに

 白鳥は湖心へと静かに滑つていく



 湖岸は葦の影に黒々として

 中心へ向かふ鳥の

 ほの白さが目につく



 この寂しい湖の日暮れどきを

 湖心へと離れる            

 白鳥の求心力には

 一体何が働いてゐるのだらう

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