余日/霜天
空はポケットには入らない
それに気付いたのはいつだっただろう
今日もよく見ずに空は綺麗だと、決め付けている
届くことを諦めるように、未だに雲にも触れていない
久しぶりに早い電車で、帰って行く
車窓からの夕焼けが、まだこんなところにもあるんだと
そこまで考えてから苦笑いする、恋しい、家路
こんなところにも、なにも
こんなところにいるのは僕の方で
数分も数年も、変わらない姿勢で
そこにいてくれたはずなのに
いつも、空が欲しかった
そんなことを告白すると
小さな紙切れをいつもくれる人がいた
四時四十五分のカーブミラーの下の空
毎日切り取り続けた空を、
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