焼肉情事/石畑由紀子
 
れちゃえ




じゅう
じゅう
じゅうじゅう
テーブルを挟んで
あなたは黙々と
肉を焼く
ねぇ
食べるのは
わたしたちふたりだけだよ
そんなに乗せちゃ
食べるのが追いつかなくて
あとで焦がすよ
なんてことも
言わずに
ただ
黙って
皿と鉄板を行き来する
箸先を
見ている


だんだん
煙でかすんで
あなたが
ゆらゆら
もくもく
見えなくなる


見えなくなる


ねぇ
そうやって
いつもそうやって
わたしをけむに巻いてきたの
知ってる?
あの時も
あの時もあの時だって、それと
あの


まだわたしは

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