水際へ/霜天
全ての言葉が、その海辺へと集まっていく
見送るためでなく
出迎えのためでなく
肩からの荷を下ろし
波打ちへと捨てていく
やりきれない空の起伏を
ひとしきり戦わせた後で
すこやかに
ただ、青の深みへと生まれ変わる
(生まれてきた時の記憶が
(いつまでも寂しさを繰り返すから
ここは、全ての水際
私はわたしとして
静かに悔いる物事を
忘れるための一日
夜は微かに寄り添い
休息のための休憩を
ただ風が止むように
ゆっくりと(音も無く)跳ねるように
振り返れば
いつも曖昧な(透明な)野の際や
望めない空の吹き溜まり
ほんのささやかな
わたしの言葉を願い続ける
この水際へ
誰もが帰っていけるように
悲しみの裏側の
溶けない氷は音も立てずに
そこに抱えているもののため
静かに私の言葉は途切れる
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