男は罪にもならず今夜も屍肉を売り捌く/いわぼっけ
男は日本海に面した町から都会に戻ってきた
ベルが鳴り受話器の中の声は
「たった今、飛び切りの上物が到着したぞ」
と言い、男は受話器を置き家を出た
地下鉄に乗り四つ目の駅で男は地上に出た
男はビルの裏手にある
地下室に続く階段を下りていった
鍵というものの存在すら忘れられたような
いくつかの扉を通ってその部屋に男は入った
男は頑丈なステンレス製の大きな扉を開いた
そこに身長一五〇cmほどの屍体があった
それは肥えた家畜のように丸々としていた
それは銀色のラッカーで塗られたような肌をしていた
男は煙草をくわえた
解剖台に横たえられたおそらくは雌であろう
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