練習/霜天
 
君の欠片がまたひとつ、足りない
玄関を出たところで気付いたけれど
君はそのまま飛んでいこうとするので
あわてて、腕を掴むと
そこからいろんなものが、外れてしまう

繋ぎ合わせようと、もがいてみるけれど
君は笑ってばかりなので
もうどうでもいいか、なんて
つられて笑ってしまう
そうやって全てのことへ、諦めを振り分けながら


その日は
腕を組んで歩いた
君はひとつずつ外れていきながら
その隣で僕も、少しずつ外れていくのかもしれない


何かの練習を、していた気がする
昨日もベッドに潜り込むと
いつの間にか溺れてしまった
いつかはここにいた君たちが
ゆっくりと、遠退いていく
君の手を、掴む
これも何かの練習のような気がするけれど
その成果を試した瞬間を
いつも、覚えていない
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