梅雨はまだ明けない/海月
駅前の喫茶店の看板は雨で濡れている
メニューは珈琲しか置いていない
と、出て行く人は呟き
豪雨の中を足早に過ぎ去る
鋭い革靴の音
刺す様な雨音
日曜日の夜は速達で届く憂鬱
黒いダンボールに入っていて
差出人の名前はなく
君は「神様じゃないの?」
惚(とぼ)けた風に僕に笑いかける
濡れて泣き落ちる滴
涙なのかな?
僕にはよく分からない
十八歳で吸い始めた煙草
今も雨の渦に流して消えた
時間の歩みは僕の成長より速いみたいなんだ
君は幸せに暮らせていると良いのだけれど・・・
少なくても僕よりも幸せだと良いのだけれど・・・
駅前の喫茶店の看板は錆びている
メニューは珈琲しか置いていない
何にも変わっていない
と、僕は呟いて溜息を吐いた
角を曲がってすぐに合った
空き地には大きなビルが建っていて
高い場所から僕を見下ろす
いつでも見られている
君はまだこの街に住んでいますか?
あの時に住んでいたアパートに住んでいますか?
見に行くのでさも怖いんだ
地面を叩く雫
梅雨はまだ明けない
戻る 編 削 Point(2)